公民館の運営及び魅力ある講座の企画について
天草市立本渡公民館長研修会
平成28年7月21日



 皆さん、こんにちは。
 ただいま教育長からご紹介がありました「ユネスコ世界遺産登録」に「天草の﨑津集落」を含む「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が国内推薦候補として選定されましたこと、おめでとうございます。私は、昭和40年代に牛深小学校に勤務していましたので、何度か「崎津天主堂」に行ったことがあります。また一つ、天草の観光資源ができましたね。
 本日は、天草市の公民館長さんと公民館担当者の方が、天草市の魅力ある公民館講座づくりのためにお集まりでございます。これまでの私の経験から、私が考えます魅力ある公民館講座の在り方についてお話しします。約90分間、おつきあいください。
 もう20年ほど前になりますが、社会教育の現状を揶揄した戯れ歌、「地域を忘れた社会教育は裏のお山に捨てましょうか」というのが話題となったことがありました。
 これは、当時の文部省が「カラオケも生涯学習」と言って、生涯学習を推進したことに端を発しています。生涯学習を推進するのに「カラオケも生涯学習」と個人の趣味や教養を高める学習を奨励したことからどこの公民館講座でも、趣味・教養を中心とした講座が花盛りとなりました。公民館が本来よってたつべき地域が置き去りにされたことからこのような戯れ歌がはやったのです。
 教育基本法第12条「社会教育」の条項に、「個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。」と規定され、さらに、「国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。」とされています。
 このことから公民館講座では、「個人の要望や社会の要請」にこたえる講座を開設しています。この際、重要なことは「個人の要望や社会の要請」のバランスです。
 個人の要望とは、一人一人が学びたい学習内容、例えば、カラオケ、外国語会話、健康保持等趣味や教養を高めることです。社会の要請とは、自治体が住民に学んで欲しい内容です。例えば、福祉問題、環境問題、人権問題、今は、学校支援も社会の要請に入ると思います。
 社会の要請と個人の要望とが重なった講座もあります。宮崎県に綾町があります。ここには、朝鮮の古代国家百済から王族が日本に亡命し、日向の国に漂着したとする伝説があります。これを町おこしに利用しています。公民館では、この伝説にちなんで「韓国語会話」を講座の一つとしました。これはまだ韓流ブームが起きる前の話です。この韓国語会話の講座で学んだ人たちが、「自分の韓国語は韓国人に通じるだろうか。試してみたい。」というわけで、韓国へ旅行し、韓国の人々と交流し、キムチづくりまで学んで帰ってきたそうです。それから綾町ではキムチづくりが町おこしにもなっているそうです。こうなると、まさに、「個人の要望と社会の要請」が重なったものです。
 この住民の学びを支え、学びの場となっている所が公民館です。阪神淡路大震災でも、東日本大震災でも、そして熊本地震でも外国メディアが驚くのは、家を失い、肉親をも失った人々が整然と並んで救援物資を受け取っている姿だそうです。外国でこのような大災害が起きたとき、略奪や暴動が起きる光景がテレビ画面に映し出されますものね。大災害のとき、人々が力を合わせて、前を向いて生きていこうとする力は、日本に古くからある公民館活動だと言われています。その公民館について少し振り返ってみます。
 公民館が、社会教育施設として全国的に普及するきっかけになったのは、昭和21年7月の文部次官通牒です。その中に、公民館の趣旨と目的が次のように書かれています。


昭和21年7月の文部次官通牒

公民館設置運営の要綱

1 公民館の趣旨及目的
 これからの日本に最も大切なことは、すべての国民が豊かな文化的教養を身につけ、他人に頼らず自主的に物を考え平和的協力的に行動する習性を養うことである。そして之を基礎として盛んに平和的産業を興し、新しい民主日本に生れ変ることである。その為には教育の普及を何よりも必要とする。わが国の教育は国民学校や青年学校を通じ一応どんな田舎にも普及した形ではあるが、今後の国民教育は青少年を対象するのみでなく、大人も子供も、男も女も、産業人も教育者もみんながお互に睦み合い導き合ってお互いの教養を高めてゆく様な方法が取られねばならない。公民館は全国の各町村に設置せられ、此処に常時に町村民が打ち集って談論し読書し、生活上産業上の指導を受けお互いの交友を深める場所である。それは謂はゞ郷土に於ける公民学校、図書館、博物館、公会堂、町村集会所、産業指導所などの機能を兼ねた文化教養の機関である。それは亦青年団婦人会などの町村に於ける文化団体の本部ともなり、各団体が相提携して町村振興の底力を生み出す場所でもある。この施設は上からの命令で設置されるのでなく、真に町村民の自主的な要望と努力によって設置せられ、又町村自身の創意と財力とによって維持せられてゆくことが理想である。

 第2次大戦後まもなく全国に公民館組織ができました。館はなく組織が先行したことから当時、「青空公民館」という言葉があったと聞いています。また、公民館活動は地域づくりに直結することから、首長が公民館長を兼ねる例が多かったと聞いています。現に、県公民館連合会の会長を、平成10年くらいまでは、中央町町長や久木野村長さんが務めておられました。
 公民館は、地域の人々にとってもっとも身近な、集い、語り、学ぶ場場として、活力と潤いのある地域社会実現のため大きな役割を果たしてきました。
 冒頭述べましたように、平成になって、公民館講座は、趣味・稽古事に関する講座が多くを占めるようになりました。そして、利用者も、特定の人々に限られるようになりました。しかし、本来公民館は、子どもや若者、働き盛りの世代を含め、地域住民が気軽に集える場であるはずです。ですから、地域のあらゆる人々が集い、語り、学ぶ場となることが求められているのです。
 このことを社会教育法では、次のように規定しています


社会教育法

第20条(公民館の目的)
 公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

第22条(公民館の事業)
 公民館は、第20条の目的達成のために、おおむね、左の事業を行う。但し、この法律及び他の法令によつて禁じられたものは、この限りでない。
 一  定期講座を開設すること。
 二  討論会、講習会、講演会、実習会、展示会等を開催すること。
 三  図書、記録、模型、資料等を備え、その利用を図ること。
 四  体育、レクリエーシヨン等に関する集会を開催すること。
 五  各種の団体、機関等の連絡を図ること。
 六  その施設を住民の集会その他の公共的利用に供すること。


 社会教育法の規定からみても、公民館の今日的役割は、地域の学習拠点としての機能をもつことです。具体的には、多様な学習機会の提供でありますとか、自発的な学習活動の支援、学習成果活用の場の提供、学習情報の提供などが考えられます。
 学習成果の活用について、旧矢部町、現在の山都町の高齢者大学生による「通潤橋案内ボランティア」を紹介します。
 旧矢部町にある通潤橋はご存じのことと思います。この通潤橋が小学4年生の社会科の教科書に載ったことから、熊本はもとより福岡方面からも社会見学に来る学校がたくさんあります。引率する先生方は、事前に通潤橋について学習して来られるのですが、地元の方に説明を求められます。その度に、教育委員会の職員が説明に出ていたそうです。するとその間の本来の仕事ができません。「通潤橋の案内をしてくれる人はいないだろうか」と考えていました。一方、高齢者大学の郷土史科で学ぶ人々は、「自分たちは町の税金で学ばせてもらっている。何か町に恩返しができないものか」と考えていたのです。教育委員会職員と高齢者大学受講生、両者の思惑が一致して高齢者大学受講生による「通潤橋案内ボランティア」が誕生したのです。案内ボランティアの人は、腕に「通潤橋案内ボランティア」の腕章をはめて通潤橋の案内をしておられます。70歳過ぎの方が、あの通潤橋の坂をすっこすっこ上り、橋の上でも案内をしています。案内ボランティアに生き甲斐を感じておられます。平成7年阪神淡路大震災が起きた年のことです。通潤橋に学習に来た子どもから、「1月に起きた阪神淡路大震災の時のような大地震が起きてもこの通潤橋は壊れませんか?」との質問があったそうです。ボランティアの人は、この質問を受けて、おそらくこれまでも大地震があったはず。にもかかわらずこうして橋がある。大地震にも耐えることができるはずだ。それで、「この通潤橋は大地震にもびくともしません」と答えようと一瞬思ったそうです。しかし、自分はそれを確信をもって子どもに言えるような勉強はしていない。自分の思い込みのままで答えるのは、勉強に来ている子どもたちに失礼なことだと考え直して、「私はそこまで勉強していません。後日調べてから学校に返事するということでいいですか。」と言うと、子どもは「お願いします。」と言ったそうです。それで、ボランティアの方は、後日、役場に残る古文書を調べたり、県立図書館にある通潤橋に関する書物で、大地震と通潤橋の関係を調べたそうです。すると、通潤橋が完成してまもなく安政南海大地震が起きた記録が目にとまったそうです。そこに、「布田保之助は畳石にわずかのズレもないことを確認した」という文言を見つけたそうです。このことを後日、学校に手紙にしたため送ったという話を聞いたことがあります。
 益城町では、公民館講座で学んだそろばんの知識と技能を生かして、3年生と4年生の算数時間のそろばん学習のお手伝いに行っています。また、放課後子ども教室では、子どもたちのそろばん学習を主導しています。講座生の方は、「6+7の教え方がどうも分からない。あなたはどう教えている?」とか「112-13がどうしても分からない子がいるが、どう教えればいいですか」など互いに教え方を学び合っています。このように学習成果を生かしてボランティア活動をすることによって、新たな学習課題が生まれます。その新たな学習課題を解決するために学習するのです。このようにボランティアと学びはリンクしあっています。これが魅力ある学習づくりの一つであろうと思います。
 本日は、熊本県「親の学びプログラム」の学習トレーナーの方もおいでのようですが、子を持つ親が子育てについて悩んでいる人が多くなっています。家庭教育支の援拠点としての機能を公民館に持たせて欲しいと思います。
 さらには、地域づくりの推進です。ここ天草市では、コミュニティセンターが地域づくり、公民館は学習の場、とその主たるねらいを分けてあるようですが、学びと地域づくりは切り離せないものと思います。それは、これまで述べましたように、学習成果を生かして地域づくりに貢献する、地域づくりのために学ぶ、これが考えられるからです。
 また、公民館は、他の教育機関、例えば、大学でありますとか、高等学校でありますとか、或いは市長部局でありますとかと連携して講座を開設することです。これも住民にとって魅力ある講座となりうると思います。
 このような住民の皆さんの学びは、生涯学習の一つです。ここで生涯学習の理念、考え方を見てみたいと思います。
 「生涯にわたって学ぶ」という概念が国際社会において登場してきたのは、1960年代の半ばと言われています。昭和40年、ユネスコの成人教育推進国際委員会でポール・ラングランが「生涯教育」を提唱しました。そして、昭和42年、ユネスコ総会に於いて、この後の教育基本原理として「生涯教育」が採択されました。「生涯教育」論では、「life-long integrated education」という用語が用いられています。「integrated」とは、「統合」という意味です。その統合には、「垂直的統合」と「水平的統合」の二つの方向があります。「垂直的統合」とは、人の生涯を通した学習を統合して考えることです。「水平的統合」とは、人の生活領域を統合して考えることです。
 教育のほとんどを社会教育が担っていることが分かります。当時、文部省で生涯学習をどこの局が所掌するかの議論があったとき、国民の学習の大部分を担っている社会教育局が所掌することが決まったそうです。そして、局名も社会教育局から生涯学習局へと変更になりました。これを契機に全国の自治体の社会教育課が生涯学習課へと課名変更しました。
 この課名変更が、生涯学習に大きな理解違いを生んだのです。それは、特に学校の先生たちでした。当時は、「生涯学習=社会教育」の理解違いが学校の先生方には多くありました。今、この考えの先生方はいません。学校で子どもたちの学習指導の元となる学習指導要領の考え方が生涯学習の考え方ですから。
 昭和47年に、ユネスコ教育開発国際委員会で「フォール報告書」が出されました。その中に「learn to have」から「learn to be」へが提唱され、人としての有り様を学ぶ趣味教養を含めた生涯学習の考え方が広くとらえられるようになったのです。
 日本には、当時のお茶の水大学教授波多野完治先生によって生涯教育の概念が紹介されました。
文部省の各種審議会でも生涯学習が議論されました。
 昭和46年の社会教育審議会答申「急激な社会の変化に対処する社会教育の在り方について」で、「今日の激しい変化に対処するためにも、また各人の個性や能力を最大限に啓発するためにも生涯にわたる学習の機会をできるだけ多く提供することが必要」と提言されました。
 昭和56年の中央教育審議会答申「生涯教育について」で、「生涯学習」という言葉が初めて使われました。この提言で生涯教育と生涯学習を次のように定義しています。


・生涯学習
 今日、変化の激しい社会にあって、人々は、自己の充実・啓発や生活の向上のため、適切かつ豊かな学習の機会を求めている。これらの学習は、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであり、必要に応じ、自己に適した手段・方法は、これを自ら選んで、生涯を通じて行うものである。その意味では、これを生涯学習と呼ぶのがふさわしい。


・生涯教育
 この生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方である。言い換えれば、生涯教育とは、国民の一人一人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的な理念である。

 そして、昭和59~62年にかけての臨時教育審議会答申で、「個性重視の原則」、「生涯学習体系への移行」、「変化への対応」が提言され、文部省は、当時「受験戦争」という言葉が流行ったように大学受験の激しさが社会問題となっていたことから、「学歴偏重社会の弊害を是正する」ことを目指して、「どの学校を卒業したか」より「何ができるか」が評価の対象にならなければならないとして生涯学習を推進しました。
 昭和63年に文部省「社会教育局」を「生涯学習局」に改組したことを先ほどお話ししましたとおりです。
 平成2年、「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」が施行されました。その 第1条に生涯学習の目的がうたわれています。


 この法律は、国民が生涯にわたって学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ、生涯学習の振興に資するための都道府県の事業に関しその推進体制の整備その他の必要な事項を定め、及び特定の地区において生涯学習に係る機会の総合的な提供を促進するための措置について定めるとともに、生涯学習に係る重要事項等を調査審議する審議会を設置する等の措置を講ずることにより、生涯学習の振興のための施策の推進体制及び地域における生涯学習に係る機会の整備を図り、もって生涯学習の振興に寄与することを目的とする。

 また、平成18年に成立した「教育基本法」第3条「生涯学習の理念」では、


 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

とうたわれています。  
 平成20年、中央教育審議会は文部科学大臣の諮問に対して「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について~知の循環型社会の構築を目指して~」を答申しました。その中で、目指すべき施策の方向性として、「国民一人一人の生涯を通じた学習の支援」として、国民の「学ぶ意欲」支えることを提言しました。そして、「個人の要望」を踏まえるとともに「社会の要請」を重視することを挙げました。
 また、今後必要とされる力を身につけるための学習機会の在り方について、子どもたちの「
生きる力」を身につけるプログラム在り方を検討すること、成人の社会の変化に対応できる「総合的な力」について検討を提言しました。
 この「個人の要望と社会の要請」とのバランスがとれた講座開設が魅力ある講座の一つでもあります。
 個人の要望、私はこれを「住民課題」または「住民の要求」と言っていますが、これに含まれる学習内容は、趣味・教養から職業能力向上まで幅がとても広いものです。冒頭にも述べましたが、平成の初めは、主催講座の中に、生涯学習振興の視点から趣味・教養的な講座が数多くありました。カラオケ、大正琴、外国語会話、太極拳等はその例です。その後は、自主講座、公民館が主催するのではなく同好会的な学習集団が自分たちで学ぶ傾向にあります。そして、行財政改革の影響からか主催講座は、減少傾向にあります。
 また、社会の要請、私はこれを「行政課題」と言っていますが、行政課題にはどのようなものがあるでしょうか。それについては教育基本法第2条「教育の目標」に端的に表現されています。


教育基本法

(教育の目標)
第2条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
 一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
 二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
 三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
 四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
 五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

 つまり、社会人として必要なことを身につけることですよね。
 社会の要請(行政課題)としての具体的学習課題としては、環境問題、人権問題、福祉問題、家庭看護の問題、納税の問題、裁判員制度、産業、まちづくり、地域防犯・地域防災などいろんな課題が考えられます。
 4月の熊本地震では、本県にいくつもの課題があることが分かりました。その中の一つが、防災・減災です。ある校長は、「これまで何度も住民を巻き込んだ避難訓練をしてきた。しかし、それは単なるイベント、行事消化でしかなかった。今回の熊本地震で生きて働くことはなかった。」と言っています。非常時に生きて働く地域防災を行政の必要課題として、それより住民の要求課題として位置づけることを熊本地震は私たちに教えてくれました。
 最近では、地域とともにある学校づくりが提唱されています。子どもたちの学びのお手伝いをする学習支援ボランティアが求められています。学習支援ボランティアの養成も行政課題の一つです。
 福祉問題の一つですが、認知症サポートが大きな課題の一つとなっています。これについては、社会福祉協議会で「認知症サポート」に関する学習の場を提供しておられますでしょう。有明町の島子小学校の校長先生から聞いた話です。福祉協議会主催で「認知症サポート事業」が6年生を対象に行われました。このような学習は子どもだけではもったいないと地域にも呼びかけ、たくさんの地域の人も学習に参加したそうです。学習後の地域の方の感想に、「私の家には認知症に近い症状が出始めた家族がいる。今日の勉強はとてもためになった。これからもこのような学習があるときは、私たちにも呼びかけてください。」があったそうです。行政や関連機関が開設する学びがたくさんあります。このように、市長部局などと連携した講座を開設することも魅力ある講座の一つです。
 私は昨年まで、「地域の寺子屋推進事業」のプランナーとして天草の小中学校を訪問していました。途中、休憩のため、道路脇の木陰に駐車しますと、ほとんどの箇所で、不法投棄が行われています。ビニル袋に入れられたゴミ、ペットボトル、空き缶、中には大型家電製品などが捨てられています。「不法投棄はやめましょう。法により罰せられます」との看板が設置されているにも関わらず、捨てられています。環境保護上大きな問題です。
 本市では各公民館で出前講座を実施しておられます。この出前講座でこのような行政課題に関する講座を開設して欲しいと思います。私は先日、亀場公民館で「人権問題」について話をさせていただきました。
 自主講座、つまり貸館事業で行われています自主講座は、ほとんどが個人の要望に沿った学習です。社会の要請の学習は行われていないようです。
 益城町では、自主講座代表者会を行っています。そして、人権問題講演会でありますとか、健康作り講演会でありますとかに参加を呼びかけています。
 このように自主講座参加者による自治会を組織し、自治会と公民館とが連携し合って社会の要請(行政課題)講座を設定して欲しいと思います。
 今、学校では、「地域と共にある学校づくり」が進められています。「コミュニティ・スクール」という言葉を聞かれたことがあると思います。コミュニティ・スクールとは、学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、学校運営に保護者や地域の人々の意見を反映させることで、一緒に協働しながら子どもたちの豊かな成長を支え「地域とともにある学校づくり」を進める仕組みです。朝の読み聞かせや郷土学習、農業体験、職場体験、保育体験などの体験活動、そろばん学習や習字、ミシン裁縫、戦争体験講話などなど、地域の人が子どもたちの学習を支援しています。
 また、放課後子ども教室などで地域の方が子どもたちの安全・安心居場所作りに参画しておられます。さらには、「親の学びプログラム」などで家庭教育支援が充実しています。これら、学校教育を支援するボランティア指導員などの養成を主催講座に是非入れて欲しいと思います。 国や県では、このような取組を「地域学校協働本部」として、学校支援を活発にするとともに地域作りまで広げようとしています。
 この取組の詳しいことにつきましては、今度機会がありましたら詳しくお話ししたいと思います。資料に「今後の地域における学校との協働体制(地域学校協働本部)」の在り方のイメージ案」と「学校と地域の効果的な連携・協働と推進体制イメージ案」をつけています。時間を見つけて是非目を通して欲しいと思います。
 終わりに、島津日新齋の「いろはうた」を紹介します。
 島津日新齋は、薩摩藩の中興の祖と言われています。日新齋は、薩摩藩武士の生活の規範となる「いろはうた」を作ったと言われています。
 その最初の歌が、
    
いにしえの 道を聞いても唱えても 我が行いにせずば 甲斐なし     
です。
 意味は、読んで字の如しです。
 学んだことを実際生活に生かさねば意味はないと言っています。
 このほか、今の私たちにとっての人生訓のような歌が47首あります。その一つ一つを鹿児島県「南さつま市」の竹田神社の境内に歌碑が建立してあります。鹿児島に旅行された折には立ち寄ってみてはどうでしょうか。市町村合併前は、加世田市といっていました。
 天草市のそれぞれの公民館で、住民の皆さんが楽しく学び、その成果が特色あるまちづくりへと繋がる魅力ある講座開設にご期待申し上げ話を終わります。
 ご静聴ありがとうございました。